読む前の保護者メモ
題名の「泥棒」は、森の劇で演じる役の名前です。なくなった物だけを見て誰かを悪い人と決めず、手がかり、本人の話、元へ戻す方法の順で読みます。
おはなし
コトノハポッケの森では、 夕方から小さな劇を開きます。
白黒のカササギ、クロの役は、 「ぬすまない泥棒」。
黒いケープでそっと現れ、 何も取らずに金色のすずを鳴らし、 みんなを笑わせる役です。
ところが朝、 おはなしの木のすず台から 金色のすずが消えていました。
「劇に使うすずがない」
森のみんなはざわざわ。 クロの姿も見えません。
けれどココは、 「役が泥棒だから」とは決めませんでした。
なくなった場所をよく見ます。
三つの手がかり
一つめは、すず台に残った 短い青い糸。
留めていた帯が、 途中で切れたようです。
二つめは、地面に続く 小さな油の点。
これは森の修理台で、 木の車輪に使う油と同じ匂い。
三つめは、遠くの葉に ちらりと映った金色の光。
三つをつなぐと、 道は修理台へ続いていました。
ココが木のうろをのぞくと、 クロが金色のすずを前に 新しい帯を編んでいます。
「クロ、ここにいたんだね」
クロは肩を小さくしました。
「朝、帯が切れかけているのを見たんだ。 劇の前に直せば、みんなが喜ぶと思った。 でも、持ってきたと言えなくなった」
取りたかったのではなく、 直したかったのです。
それでも、何も言わずに動かしたので、 みんなは行方が分からず困っていました。
ココは言いました。
「直したいと思ったことと、 先に知らせることは、どちらも大事だね」
クロはうなずきました。
二人は新しい帯を最後まで編み、 すずを台へ戻しました。
クロはみんなに、 見つけたこと、運んだこと、 言えずにいたことを順に話しました。
森のみんなはすずを確かめ、 修理してくれたことにお礼を言いました。
そして、すず台の横に 「直す前に知らせるためのかご」を置きました。
壊れそうな物を見つけたら、 そこに入れて係の人に伝える約束です。
夕方の劇で、クロは 「ぬすまない泥棒」のケープを着ました。
金色のすずをちりん。
何も取らず、みんなに一礼。
今度は隠れず、 大きな拍手の中へ戻ってきました。
読み終わったら
「クロは何をしようとした?」「何を先に伝えるとよかった?」を一つずつ聞きます。役名や一度の行動を、その子全体の名前にしないことを物語の結びにします。
次の安全な夜の冒険はポンと夜のきらきら橋、4歳向け全体はお話一覧から選べます。
保護者メモ
「泥棒」と人を呼ばないために
題名の言葉は劇の役名で、クロ本人を決めるラベルではありません。善意の行動にも、周囲が困った部分と次の伝え方があります。罰や恥で終えず、理由を聞き、物を戻し、再発を防ぐ約束まで描きます。追加の事件カードは、この無料の修復を読み終えた後だけの任意資料です。

