読む前の保護者メモ
閉店後の小さな音に少し驚きますが、トトは足元灯をつけ、距離を取って正体を尋ねます。魔法のどんぐりは食べ物ではなく、音をしまう空想の品です。
おはなし
おはなしパン屋の閉店後。
トトがトレーを片づけていると、 低い棚のほうから音がしました。
こつ、こつ。
少し間をあけて、 また、こつ。
店にはトトしかいないはずです。
胸が少しどきどき。
トトは暗いまま近づかず、 足元灯をもう一つ点けました。
「だれか困っていますか?」
返事はありません。 けれど音も、止まりました。
トトは棚の前をよく見ます。
三つの跡
床に、細かな木くず。
棚の角に、短い青い糸。
その先には、 小さな車輪の跡が二本。
跡は粉袋ではなく、 棚の一番下へ続いています。
トトが同じ高さまでしゃがむと、 棚の板が小さな扉のように開きました。
中には手のひらほどの店。
三段の棚には、 渦巻き、点々、しま模様の 光るどんぐりが並んでいます。
棚の下で、ヤマネの店主が 倒れないように支えていました。
「音は、あなたでしたか?」
「はい。新しい棚を運んだら、 車輪がはさまってしまって」
青い糸は荷車のひも。 木くずは棚の脚。 こつこつは、助けを呼ぶ音でした。
トトは勝手に店へ入らず、 「手伝ってもいいですか」と聞きました。
二人は棚を少し持ち上げ、 小さな車輪を平らな溝へ戻します。
ぐらぐらしていた棚は、 まっすぐ立ちました。
そのとき、しま模様のどんぐりが 一つだけ床にころん。
どんぐりの帰る棚
受け皿は三つ。
渦巻き、点々、しま模様。
ころんだどんぐりと 同じ模様はどれでしょう。
トトは線の向きを見比べ、 しま模様の皿へそっと戻しました。
どんぐりは小さく光り、 森の雨音を一度だけ聞かせます。
さら、さら、さら。
「これは音をしまうどんぐりです。 食べる物ではないんですよ」
ヤマネの店主は、 三つの棚が安全かもう一度確かめました。
トトもパン屋の床へ戻り、 開いていた小さな扉を 店主が内側から閉めるのを待ちます。
「明日の昼、また開きます」
足元灯が一つ消え、 棚はいつもの木の板に戻りました。
こつこつの理由が分かったので、 トトの胸はもうどきどきしません。
パン屋も小さな店も、 それぞれの戸を閉めておやすみです。
読み終わったら
木くず、青い糸、車輪跡が何につながったかを順に振り返ります。不思議なものに急に近づかず、明るくし、声をかけ、許可を得て手伝ったトトの行動も確かめます。
雨の日の友情へ戻るならココと雨の日の小さな約束、次は約束を直すこわがりドラゴンのくしゃみです。
保護者メモ
少しドキドキしたところで止めてもよい?
音の正体をすぐ見せず、明かりと声かけで安全を作ります。怖さが強い日は「ヤマネさんが棚を支えている」と先に伝えて構いません。実物の木の実は口に入れず、追加の手がかりカードは無料の安心結末後だけに案内する任意資料です。

